きえん つれびと
奇縁の連人
「で、やっぱりアンジュはあんたの店に間違いない訳?」
人格が増田に入れ替わると、とたんに眼光が鋭くなる。
「それは絶対に間違いない!店構えに見覚えはなかったが、あのクロワッサンの匂い……あれだけは絶対に間違えない自信がある!」
増田は強く言い切った。
「そういえばあの店、一度新装開店してその後人気が出始めたのよね」
綾子が口元に手を当てながら言う。ならば、店舗を外から見ただけでは判断がつかないかもしれない。
「あんた、家族はいるのか?」
高耶が増田に訊いた。
「もしあんたの店を乗っ取ろうって奴がでてきたら、家族が黙ってないんじゃないのか?」
増田は首を横に振った。
「生前の記憶はもう殆ど残っていないんだ……。いたのかもしれないし、いなかったかもしれない」
「三浦と出会った病院で亡くなったのは間違いないんだな?」
「それは間違いない。どこの病室だったかも覚えてる」
その他ひと通り話を聞いた後で、三人はまた隅に寄って相談を始めた。
「店のほうは登記を取ってみましょう。彼の身元に関しては病院を当たってみるのが一番早いと思います」
そう提案した直江に綾子はあっけらかんと言い放った。
「てゆーかそんなのめんどくさいからさ、直接店長に話聞きにいきましょうよ」
直江が呆れた顔で綾子を見た。面倒くさがりにもほどがある。というより、何か他意があるような気がしてならない。
「乗っ取りが事実だとして、そんなことを企む人間が素直に話をしてくれると思うのか?」
「あの店長さんがそんなことする訳ないんだってば!」
直江は大きくため息をつくと、二人の憑依霊へ視線をやった。
境遇が似ていなくもない憑依霊ふたりはなんだか異様に気が合うらしく、楽しそうに話している。
「土をこねるというのは空気を抜く為なんだけど、やりすぎてもいけないようなんです。乾いてしまうから」
「やりすぎてもいけないというのはパンでも同じだね。パンをこねる過程で注意すべきは"グルテン"なんだけどね」
「ええ、ええ」
「グルテンっていうのは……」
そこから増田の講義が始まった。高塚は人の好い笑顔を浮かべてにこにこと聞いている。
なんだか奇妙な友情が生まれ始めているようだ。
「ともかくここにいてもしょうがないから」
結論を促すために綾子は景虎を見た。
直江も見る。
二人の視線を浴びながら、高耶は言った。
「……店長に会ってみる」
綾子がガッツポーズをとった。
「高耶さん」
「どんな奴なのかは直接話して見なきゃわかんねーだろ」
「……わかりました」
「決まりね!」
「"陶芸家"のほうはどうしますか?」
「連れて行く」
「はい?」
「何か仲良さそうにしてるし。色んなとこに連れて行ったほうが思い出すきっかけも掴みやすいかもしんねーし」
「そうでうすね」
直江は頷いた。
そうと決まれば三人の行動は早い。すぐにふたりに声をかけ、三浦はバイクで、その他の4人が車で移動することとなった。
人格が増田に入れ替わると、とたんに眼光が鋭くなる。
「それは絶対に間違いない!店構えに見覚えはなかったが、あのクロワッサンの匂い……あれだけは絶対に間違えない自信がある!」
増田は強く言い切った。
「そういえばあの店、一度新装開店してその後人気が出始めたのよね」
綾子が口元に手を当てながら言う。ならば、店舗を外から見ただけでは判断がつかないかもしれない。
「あんた、家族はいるのか?」
高耶が増田に訊いた。
「もしあんたの店を乗っ取ろうって奴がでてきたら、家族が黙ってないんじゃないのか?」
増田は首を横に振った。
「生前の記憶はもう殆ど残っていないんだ……。いたのかもしれないし、いなかったかもしれない」
「三浦と出会った病院で亡くなったのは間違いないんだな?」
「それは間違いない。どこの病室だったかも覚えてる」
その他ひと通り話を聞いた後で、三人はまた隅に寄って相談を始めた。
「店のほうは登記を取ってみましょう。彼の身元に関しては病院を当たってみるのが一番早いと思います」
そう提案した直江に綾子はあっけらかんと言い放った。
「てゆーかそんなのめんどくさいからさ、直接店長に話聞きにいきましょうよ」
直江が呆れた顔で綾子を見た。面倒くさがりにもほどがある。というより、何か他意があるような気がしてならない。
「乗っ取りが事実だとして、そんなことを企む人間が素直に話をしてくれると思うのか?」
「あの店長さんがそんなことする訳ないんだってば!」
直江は大きくため息をつくと、二人の憑依霊へ視線をやった。
境遇が似ていなくもない憑依霊ふたりはなんだか異様に気が合うらしく、楽しそうに話している。
「土をこねるというのは空気を抜く為なんだけど、やりすぎてもいけないようなんです。乾いてしまうから」
「やりすぎてもいけないというのはパンでも同じだね。パンをこねる過程で注意すべきは"グルテン"なんだけどね」
「ええ、ええ」
「グルテンっていうのは……」
そこから増田の講義が始まった。高塚は人の好い笑顔を浮かべてにこにこと聞いている。
なんだか奇妙な友情が生まれ始めているようだ。
「ともかくここにいてもしょうがないから」
結論を促すために綾子は景虎を見た。
直江も見る。
二人の視線を浴びながら、高耶は言った。
「……店長に会ってみる」
綾子がガッツポーズをとった。
「高耶さん」
「どんな奴なのかは直接話して見なきゃわかんねーだろ」
「……わかりました」
「決まりね!」
「"陶芸家"のほうはどうしますか?」
「連れて行く」
「はい?」
「何か仲良さそうにしてるし。色んなとこに連れて行ったほうが思い出すきっかけも掴みやすいかもしんねーし」
「そうでうすね」
直江は頷いた。
そうと決まれば三人の行動は早い。すぐにふたりに声をかけ、三浦はバイクで、その他の4人が車で移動することとなった。
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奇縁の連人